静穏の日々

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アルバムレビュー・山下達郎「SONORITE」 〜 これが、世界へ誇る日本の音楽【'20年冬, 私の1枚】

本ブログ開設から記念すべき50本目の記事。

何書こうかな~なんてしばらく色々考えてたけれど、年明けからの記事更新 続けて電車、本、映像…と音楽以外のことにも絡めた好きなテーマを一気に書けたので、それでは久しぶりにシンプルにアルバムレビューでも書いてみようかなということで、今ハマり始めている山下達郎さんの2005年リリースのアルバム「SONORITE」について今回は紐解いていこうかなと思っております。


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最近 自分の中でアツい、達郎さんの音楽。3年前の夏にハマった「僕の中の少年」と、2年ほど前からじわじわハマっている「FOR YOU」…この2作がこれまでに好きになった達郎さんのアルバムで、いずれもこれらの音楽を聞いていた時間がかけがえの無い思い出となったという経緯があるんだけど、他のアルバムとか曲はまだ有名なの以外 全然 知らなくて。

で、ディスコグラフィの全貌を知りたくてこの頃 wikiをじっくり見てるんだけど、これがまためちゃくちゃ濃い情報が載ってるんですよね。どういうタイアップがあって、出した曲の制作過程があって、どういう風に曲が広まっていって…とか。古い情報が知りたい若人にはたまらん情報量で。読んでるうちにどんどん聴きたさが増しました。

そんな訳でひとまず、40年来の?達郎ファンである父から「SONORITE」と「Ray of Hope」のデータを拝借し 通学の行き帰りに聴いてたのだけど、何かえらく感動してしまって。間違いなくこれは、世界へ誇るべき素晴らしい音楽でしょうよと改めて。素敵な歌声で、躍動的で力を貰えるサウンドで。こんなアーティストのアルバムはもっと聴きたい。

父に、なかなか最新アルバムが更新されないことについてファンとしてどう思うのか訊くと「もう充分 良いアルバムあるし,いいんじゃない?」とのこと。"そんな感じで!?"とは思ったものの、妙に納得してしまうようなところも。

…前置きが長すぎた。レビューいきます。

 

「SONORITE」 (ソノリテ)

2005年9月14日リリースのアルバム。タイトルはフランス語で,「音の響き具合」の意。

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①MIDAS TOUCH

この曲を聴いたことで、「SONORITE」ちゃんと聴いてみよう!と思ったのだった。 "MIDAS"とはギリシャ神話に出てくる、触ったもの全てを黄金に変える能力を得た王ミダスを表しており、常人には到底 思いつかないセンスの?美しきエロティシズムが薫っている。曲は、達郎さんとしては珍しいR&B調。この曲が1曲目にあることで、アルバム全体の流れに惹き込まれる。間奏部分のサックスソロ×ベース音が心地よすぎ。後にも述べるけど、このアルバムは全体として自然の美しさを音楽に織り交ぜて作り上げられた緻密な世界観がより一層 濃い印象で。"黄金の夜に抱かれて ちっぽけな鉱石になりたい"というフレーズのインパクトが◎。

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(↑僕の思うMIDASのイメージ。水曜日のカンパネラ「ラー」MVからの1シーン)。

 

KISSからはじまるミステリー
< feat.RYO(from ケツメイシ)>

KinKi Kidsに提供した曲のセルフカバーで、ラップパートにケツメイシのRYOさんを迎えた名コラボレーション。これね…自分ケツメイシ大好きなのに この曲のコラボについてはチラッと小耳に挟んでいた程度で、今まで殆どちゃんと聴いたことなくて非常に勿体なかった。wiki 読むと分かるんだけど達郎さん、RYOさんのラップをとても気に入っているみたいで。達郎さんが「何にも言うことはありません。変な言い方だけど予想以上。」と太鼓判を押すRYOさんのラップ。なんかファンとして嬉しくて、じんわり心が温まるな。あと、お二人の声が"似てる"というのは今回 新たな発見だった。確かに似てる。相性良すぎじゃないですかこのコラボ…。

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加えて、KinKiの歌う本家の「KISSからはじまるミステリー」も聴いたのだけど、好きだなぁ。嵐とかKinKiに楽曲提供したり、高確率でSMAPメンバーの主演ドラマに曲を提供してたり、ジャニーズ系の作品と達郎さんは関わりが深いけど、それらの楽曲を追ってるとどれもクールでカッコイイ雰囲気が伝わって、ひと味違う達郎ワールドって感じで良い。

 

③FOREVER MINE

先日の"名作MVレビュー"で述べたけど、丹下監督のMVで観た 切なく,心を激しく掻き立てられるような世界観→からの第一印象で曲の思い入れが深化、繰り返し聴くうちにメロディーを脳内再生するだけで鳥肌がサーッと立ち涙腺が即座に刺激される程の感動レベルに達し、只今 ハマり度・強。

何だろう、完全に個人的な好みではあるんだけど、2000年代中期(2005〜2007)ってポップソングにしてもバラードにしても 激しく心に刺さる名曲が推しアーティストどの人も一堂に会していて、1番 日本の音楽が濃密であったと言っても過言ではないと認識してるんだけど、そのイメージでこの「FOREVER MINE」のメロディーに触れる感覚の、尊さというか。歴史に深く刻まれたサウンドが眩しい。"本当の愛の静寂へ"……グッとくる。今年の自分のベストフレーズになりそう。

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さあ 僕の胸で 腕の中で
忘れていた夢の続きを

さあ 呼びさまして
溶けて行こう  僕と
本当の愛の静寂へ

※MVについてのレビューはこちら。

 

④忘れないで

NHK系アニメ「アガサ・クリスティー名探偵ポワロとマープル」のエンディングテーマになったという、竹内まりや作詞の"カンツォーネ"。"カンツォーネ"って具体的にどういうものだっけ?と思い YouTubeで調べたら、出てきたのはイタリア発の、ストリングスサウンド光るムーディー+壮大な曲の数々。おぉ、こういうものね!とイメージがはっきりしたものの、この「忘れないで」は"洋"というよりかはどちらかといえば落ち着いた"和"の雰囲気が香った、(波風の吹く?)演歌調の1曲であるように思える。でもやっぱり曲本来の意味合いとしてはイタリアの異国情緒が込められてると思うし、このイメージを膨らますためにもいつかイタリアの名所へと発って旅をし、「忘れないで」を再生してみる…なんてことはちょっと夢だったりしますね。

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兎にも角にも、4曲目にして既に音楽性の振り幅が特に激しい作品であることに驚いてしまって。本当にこのアルバムはとってもワクワクするなぁ。

 

⑤風がくれたプロペラ 

前の曲の激しさから一転、ゆったりとしたサウンドで癒してくれる しっとりとした前向きな1曲。繰り返すプロペラの回転音「BOOM BOOM BOOM」のフレーズを軸に、昼下がり、丘の上の公園、芝生、青空…様々な自然の情景が印象的に登場する。

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BOOM BOOM BOOM
BOOM BOOM BOOM
風がくれたプロペラ
BOOM BOOM BOOM
ほらね
青い空を飛べる 飛べるよ
雲の上に乗れる 乗れるよ

これも、歌詞と全く同じ状況で,場所でこの曲を再生してみるというのをやってみたい。↑の画像みたいな公園、何処ですか。

 

⑥ラッキー・ガールに花束を

開始早々に響く低いベース音、アップテンポなデジタルサウンド、パッと広がる 吸い込まれるような夏模様…これまた珍しい山下達郎が堪能できる変わり種なナンバーだ。この曲が来て、より一層このアルバムの世界にグッと惹き込まれたんだよな~。

消失

夏の気配に気付いて
君の瞳がキラリ☆
Lai Lai Lai
それだけで何も言えない

見慣れた街の通りに
バラの香りのホロスコープ
Lai Lai Lai
何て不思議な予感

☆と◎が良い味 出してる。サウンドから、何処と無く 草原に立つ快活な少女の姿がイメージされて。因みに「ホロスコープ」とは占星術における各個人を占うための天体の配置図らしく、その"バラの香りの"というのはどういうことなのかよく分からないけど、なんだかロマンチックな響きだ。

因みにこの曲、「忘れないで」と同じタイアップであるNHK系アニメ「アガサ・クリスティー名探偵ポワロとマープル」のオープニングテーマとなった1曲らしい。いやはや…達郎さん2曲提供で、これだけ毛色の違う曲を同時に起用するこのアニメ、一体 何者だ…? 世代的に観ててもおかしくないはずなんだけど、分からないなぁ。めっちゃ観てみたい。

 

⑦SECRET LOVER

アコースティックな質感が印象的な,スローテンポでじっくり聴かせる、不倫がテーマの1曲。

達郎さん曰く「不倫の歌は、あまり若い頃にやるとわざとらしいけど、まあ50を過ぎたし、そろそろいいかなって思って。あとはそれをいかに綺麗にやるかと。」とのこと。

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どうしてこんなにも
夜は短か過ぎる
誰にも知られずに
あなたを愛したいのに

人目を気にして
会うのはいつも真夜中で
吐息に焼かれて
いつか滅びるヴァンパイア

こういうテーマでリアリティたっぷりの歌詞が書けてしまうって、イマジネーションに長けている才能というか、アートだなぁ。

 

⑧フェニックス (2005 REMIX)

NHK系「地球だい好き 環境新時代」のテーマソング。この曲が最近 本当に好きで、聴くたび毎秒 心を震わせてしまうような、大きな感動の海にダイブしてしているような…とにかく最高のバラード。曲順的にアルバムの核となるポジションであるがゆえ、"この作品に出会えて良かったな"と心から思わせてくれるようなこういうサプライズこそ、山下達郎の醍醐味といったところだろうか。

タイトルからも察せられる通り、この曲には手塚治虫 先生の「火の鳥」のイメージがあるらしい。生命の本質や人間の業が深く描かれているという 語り継がれる名作であるこの作品が、達郎さんのインスピレーションに大きく影響を与えたのだろう。いつかチェックしてみたいものだなぁ。

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涙をこらえて
くちびるを噛んで
いくつもの嵐を
踏み止めながら
僕等は未来へ
歩いて行くんだ
フェニックス
今 静寂がふるえた

「FOREVER MINE」同様、「静寂(しじま)」という言葉が印象的に使用されている。

言葉の持つ意味合いとか表現とか、考えてるだけで一気に曲の世界に惹き込まれるな。

 

⑨LIGHTNING BOY

5拍子で駆け抜けるハイテンポな書き下ろし曲。風、虹、闇、光…目まぐるしく移り変わる空模様を表現し、"永遠の命"という印象的なフレーズへとまとまる独特の芸術性が、このアルバムの中にフィットして溶け込み 流れで惹き込まれる。キラッと光るような音はシンセサイザーだろうか。色々な音に感覚を刺激され、サックスソロの心地良さで完全に曲と心がシンクロする。尺長め、全力。

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⑩白いアンブレラ

「ラッキー・ガールに花束を」との両A面でシングル・カットされた、管楽器の音が印象的でジャジーな1曲 (※両曲とも HONDA「LIFE」のCMソング)。

「夏の終わりの銀座」をイメージしたとのことで、アーバンでお洒落な雰囲気にグッと癒される。アルバム内のポジション的にも、これをシングル・カットしようと思ったチョイスが絶妙で素敵。

「LIGHTNING BOY」からの流れで、激しく降っていた雨が弱まってきて晴れ間が差してきた、みたいな様子を思い描くことができる。

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Oh  時がいつも少し止まる
胸の中で
こんな日には

白いアンブレラ
廻るアンブレラ
通り雨のような
恋だった

1つのアルバムの中で、恋のときめきもエロティシズムも自然の輝きも異国情緒も体感できる達郎さんの音楽って…改めて凄い。

 

⑪太陽のえくぼ (ALBUM REMIX)

フジテレビ系「めざましテレビ」の2005年テーマソングとなった爽快なナンバー。やっぱり「めざましテレビ」の曲っていうと、思い切り明るく,燦然と輝くようなオーラが全体から漂ってて、アルバムの中にあると とても映えるんですよね。知ってる好きな曲だとミスチルの「Happy Song」とか、スピッツの「ヘビーメロウ」とか。曲まるごと"朝の活力"を体現してて、聴いてて元気が出てくる。

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因みにタイトルの「太陽のえくぼ」とはスマイルマーク😊をイメージしているらしく シングルのジャケ写もそういうイラストになってるけど、歌詞の中から思いつくイメージだとやっぱり女性の笑顔で↓こういう感じかなって。(フリー素材)

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⑫2000トンの雨 (2000t of Rain)
(2003 NEW VOCAL REMIX)

元々 1978年のアルバム「GO AHEAD!」の収録曲であり、映画の主題歌として使用したいという堤幸彦 監督の要望によりヴォーカル再録 & ピアノの"オーバーダビング"が行われ、「フェニックス」との両A面シングルとして2003年にリリースされた。このシングルのゴージャス感ヤバイな…。購入意欲が高じたら どこかのタイミングで入手したい1枚だ。

達郎さん曰くこの曲は「ボーナストラック」のようなポジションだと言うけど、この"自然の美しさ"に溢れたコンセプチュアルなアルバムの中の終盤に「2000トンの雨」を投入するという絶妙さが本当に凄いなと思うし、それはそれは深く熟考し練って練っての選曲であったのだろう。優しく静かに、しとしとと降り注ぎ続ける雨の感じが伝わってくるサウンド…心が洗われるよう。この曲を聴きながら雨の情景へと思いを馳せると、とっても懐かしい気分になるのは何故だろう。 年を重ねていつか、雨降る広大な大地に立って、「2000トンの雨」を再生する…夢。

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⑬WHEN YOU WISH UPON A STAR 〜星に願いを〜

1940年公開のディズニー映画「ピノキオ」の主題歌である有名曲のカバーで、この曲を大変気に入っていたという日音(会社)の元社長がアルバム制作中に亡くなったため、その追悼の意を込めての収録となったらしい。いや~、よく知っている曲だけど、改めて聴いてみてこんなに素晴らしい曲だとは思ってなかったな。初聴き時、夜の帰宅時に聴いてたらなんだか泣きそうになってしまって、結局のところこのアルバムの中で最も感動した1曲かもしれない。単純に達郎さんの歌声が素敵すぎるというのもあるし、演奏が素晴らしいというのは勿論だし、曲本来の、魔法がかかったように美しい雰囲気とか、第二次世界大戦中に制作された楽曲であるだけにこの曲が聴かれた時代の背景とか、色々なことが重なって、非常にグッとくるラストトラックですね。

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…以上、13曲の感想を書いてみました。

また、こういう心に沁みるアルバムに出会えたらいいな。