アルバムレビュー・Mr.Children 「IT'S A WONDERFUL WORLD」 〜もっと愛しいミスチルワールドへ!究極のポップ名盤、愛称”イツワン”。
ミスチル愛が止まらない。
先月末、約1年ぶりのアルバムレビューを「DISCOVERY」に捧げ 散々 色々語ったばかりだけど、またもう1つミスチルのレビューが書きたくて仕方がなくなってきた。
今月3日 ついに最新アルバム「重力と呼吸」がリリースされ、これに関して 今のところ上手いこと感想を語れてはいないものの 凄く惹かれるところがたくさんあってワクワク感に満たされ、からの先日 アメトークにて放送された「Mr.Children 大好き芸人」を見て 知らなかった面白い知識が満載の番組に心を動かされ…と、完全に自分の中でミスチルがトップトピックに来ている状態。これ逃すともう、いつちゃんと語れるか分からない。乗るしかない このビッグウェーブに。
ということで今回は、今 自分の中で急激に愛が深まってきている、ファンからの人気もとても高い名盤 「IT'S A WONDERFUL WORLD」(愛称:イツワン) について語っていこうと思います。2002年5月10日リリースの作品。
で、まず触れたいのがやっぱり、当時流れていたアルバムのプロモーションCMにめちゃくちゃ惹かれるって話題なんですけど。
制作されているのは3パターン。
①収録曲「LOVE はじめました」の 少し不気味さも感じるエレクトロ・ボイス・イントロに合わせて、街が地面に沈んでいくアニメーションと、アルバムの発売日が表示される”序章”的な告知
②リード曲「蘇生」に合わせて、子供たちのいる砂場に中に 政治家らしき紳士2人が無邪気に砂を投げ合う極めて異様な光景…歌詞との関連性も考えさせられる刺激的な告知 (※下で詳しく語ります)
③ ①に同じく「LOVE はじめました」に合わせて、様々な人物のCGが回転しながら変化していく…アルバム全体のコンセプトが気になって仕方がなくなる”好奇心 掻き立て”型告知
いずれも目に焼き付いて離れなくなるような 刺激的映像の連続で、もうこれほんと最高だと思うんですよね。このCMを観たからこそ、”どんなアルバムなんだろう…?”と視聴前から気になっていたのもあるし、間違いなく 音楽ファンでいる限り一生見続けていきたい貴重映像だな〜なんて思ってしまうんですよね。ミスチルのプロモって、威力が桁違い。アーティスト達の巧みなアイデアの結晶ですわ。
①overture
そしてそんなアルバムの最初を飾るのが、コバタケさんが単独で作曲したらしい、次曲「蘇生」へと繋がる序章のメロディ。壮大なオーケストラが段々と賑やかさを増していき、時計の秒針の音が聞こえる演出…圧巻のスタートです。興味津々。
②蘇生
怒涛の超名曲。名曲の多いミスチルのアルバムオリジナル曲の中でもトップレベル、感動的で歴史に刻まれそうな、心を撃ち抜かれる6分が幕を開ける。
まずもう、タイトルとテーマが素晴らしいんですよね。サビの歌詞が ”何度でも 何度でも 僕は生まれ変わって行く” で 題:「蘇生」って。未だかつて、こんなに秀逸で、真っ直ぐで美しい”生”の表現、誰が思いついただろうか?? もはや、人類が描ける芸術と価値観の遥か先を行ってしまったような。曲の中に広がる壮大な世界に魅了されつつも、↑の一節に全体のテーマが集約されて、シンプルに刺さるような破壊力があり、どうしてもそこばかり口ずさんでしまうというか。
と、ここでプロモ映像との関連を考えてみて。これ、砂場に国会議事堂らしき建物が型どってあるために自然と紳士2人が”政治家”であると解釈したのだけれど、この、様々な政治家人生を経て 心に大分曇りが出たり 迷うことも多かったであろう人物らが まるで童心に返るように砂場ではしゃぐ異様な姿…を見つつの ”今も心に虹があるんだ ” ”まだやりかけの未来がある” というフレーズ、あまりにも心にくるものがありすぎませんか。この辺りの解釈から、ミスチルの魅力の1つである風刺色の強さなんて特徴を挙げられるのにも繋がっていくのかな、と思うのですが。もう、色々と気になって仕方がないな〜。考えれば考えるほど奥が深すぎる。そして僕は、こういったアートさ・知的さ 漂う名曲が大好物な訳です、ほんとありがとうございます。(?)
③Dear wonderful world
壮大で賑やかな「蘇生」から一転、静かで優しい世界へと誘われる。短い曲だし 最初聴いた時は”さらに盛り上がりそうなポジションの3曲目でこんな控えめな曲もってくる??”と少し不思議に思ったけれど、繰り返し聴いてちゃんと好きになった今、この曲がアルバム全体の展開にとって如何に重要な役割を担っているかが自然と分かってくるんですよね。「IT'S A WONDERFUL WORLD」というビルの土台に組み込まれた 絶対に欠かせないピースであり、この2分17秒を体験することで、全体の世界観により一層 深みが増してくる。
”通り雨が止むまで カプチーノでも飲んで待とうか?”という歌詞の通り、本当にカフェにいるような演出の中で、雨音が優しく聴こえてくるのが印象的。思わず目を閉じて、耳をすませてしまう。
――この醜くも美しい世界で。
④one two three
アントニオ猪木さんの「1! 2! 3!ダァ〜!」を参考に作られたという 優しく包み込まれるような気持ちの良い応援歌。これは本当、聴いてて元気が出ますよね〜〜。色んな情報量がごちゃごちゃに詰め込まれて なんだかホッとするような幸福な哲学感を生み出す桜井和寿イズム…そうそうこーいうのが好きなんだよ!!って感じですね。
ビデオに撮った「ショーシャンクの空に」見てからは もっと もっと確信に近いな
暗闇で振り回す両手もやがて上昇気流を生むんだ
ここの歌詞良いな〜。個人的に今年ちょうど「ショーシャンク」観たばっかりだったので、グッと親近感 & 共感度が増したフレーズ。
色々と生きづらい世の中だけど、”もう後ろなんか見ないぜ 1.2.3! ” って、心の中で唱えてみるだけで少しハッピー。
ちなみに ラストで聞こえてくる猪木さんのこの名言「道」、実際に桜井さんがご本人に許可を得て使用した音声だそうですね。粋だな…。
⑤渇いたkiss
こりゃぁとんでもない隠れ名曲だ!!
聴けば聴くほど じんわりとくる切なさが止まらなくて、好きだな〜と思ってたら 実際ファンの方からの評判もかなり高い名曲だそうで、やっぱ良いよなぁ!って。
曲の内容は別れ間際のカップルを男性の内面側から描いた 冷たくてじっとりした感情が渦巻いてたりするものなんだけど、そんな反面 メロディ,演奏,曲の展開とか、鳴ってる音全てが美しくて、暗い気持ちを静かに洗い流していくようにスッキリとした気分なアウトロで終わるのが鳥肌モノ。
本当、”美しい”という言葉に尽きますわこの曲は。冷たい風が吹く冬の道で聴いて、淡く儚い恋模様でも想像しながら黄昏たい。というか他人事じゃなくて、いつか自分もこんな感情に満たされる時が来るのかな。なんて
⑥youthful days
そして、「渇いたkiss」からの静かな流れのままスッと「youthful days」に入るこの部分のときめきが、今作の中で屈指のハイライトシーン。
この曲が主題歌となった月9ヒット作「アンティーク 〜西洋骨董洋菓子店〜」は、サザンで言う「ふぞろいの林檎たち」のような主題歌アーティスト=サントラ 一体型作品であり、全編通してミスチルが流れまくった上に最新の主題歌まで聴けたというこのドラマは きっとファンにとって忘れられない大切な思い出になっただろうし、僕もいつか絶対観たいなって思うんですよね。
ほら、これ凄くないですか?最終回に流れた曲 24曲って。タイトル「終わりなき旅」だし。力の入りよう半端ないな…!! ミスチルが如何に支持され続けているかが分かる重要な資料だよなぁ これ。
と、まぁ「アンティーク」の話はさておき、この曲「youthful days」、圧倒的な疾走感と瑞々しい爽やかさに満たされる、言わずもがな大名曲ですよね。
歌詞の中で描かれる男女が 愛の力で様々な苦難を乗り越えていく姿は、もうキュンとしすぎて狂おしいレベル。というか羨ましくて理想の世界すぎて、、 ”切ないほどの抱擁とキスで 乾いた心を濡らしてよ”…って本当に良いフレーズだわ……これぞイッツアワンダフルワールド。
繋いだ手を放さないでよ
腐敗のムードをかわして明日を奪うんだ
ここのフレーズが特に好き。
あと”その仕草 セクシーだと”ってところの”sexy”の言い方が好き。セクスィー。
⑦ファスナー
これもまた凄い名曲。このアルバムを好きになるよりもかなり前に スガシカオさんのベストアルバム「SugarlessII」で桜井さんと2人で歌っているのを聴いててお気に入りだったので、もうすっかりスガさんのイメージが強い1曲になった。御2人とも良い歌声だよな〜って強く実感できる名コラボだったり。このアルバムとは関係ないですけどね。笑
この曲、シンプルで温かいギターの音が映える心地よいメロディな反面、内容は ”男女が性行為をしようとして男が女の服を脱がす時に ちょっと色々な感情が混じって萎えちゃってそこから哲学的思考が始まる” 的な、確実に 通勤・通学の最中にボーッと聴くような内容じゃない深みがあって考えさせられちゃうのだけど、どうなんだろうねこの曲。
ミスチルと関わりの深い映像監督・丹下紘希さんがこの曲を短編映画(「FASTENER」)にしたという情報が残ってるので、ちょっとそれ観て 解釈を色々考えてみたい気がしますね。
⑧Bird Cage
最近 自分の中で急激にキテる1曲。開始早々 独特の電子音と暗いバンドサウンドがただならぬ雰囲気を演出し、エコーのかかった桜井さんの美しい声にドキドキする。Aメロ,Bメロと経てサビで一気に盛り上がりに拍車がかかる感じ…すっごい好き。
そして終盤、静かになってからの 左右から
バードゥケイッヂ… <
> 明日から僕ら晴れて自由の身だ…
って囁くように聞こえて また段々盛り上がるところ、ゾクゾクしすぎてヤバイ。
もう!!一体この男女に何があったんですか!!!!!!と、いうか桜井さんの恋愛観に対する表現力の高さって、、、恐ろしくなってくるレベル。これも是非 映画化お願いします、丹下監督。
⑨ LOVE はじめました
さぁ、ここで来ました もう1つのリード曲。10曲のアルバムなら”もう終わりだな…”の感覚なんだけど、このアルバムは ここまでギッシリ面白みが詰まってた上にこの後も怒涛の充実感に満たされる曲たちが待ってるから 最高なんだな。満足なんだよなぁ。
さてこの曲、タイトルの感じだと明るめの曲かな?と思うんだけど、実際は 冷たく現代的なサウンドの痛烈な社会風刺ソングで。聴こえてくる音がどれもめちゃくちゃカッコよくて無論 好きなだけど、不気味さもなかなかのものでこれまたドキドキしたり。
殺人現場にやじうま達が暇潰しで群がる
中高生達が携帯片手にカメラに向かってピースサインを送る
犯人はともかく まずはお前らが死刑になりゃいいんだ
特に印象深いのがこのフレーズ。ミスチルの曲の中でも屈指の尖りを見せてる部分。
まず逆に、こんなに暗い印象を受けるのに テーマが”LOVE はじめました”なのは、歌詞を読むに、どんな醜い時代でも”LOVE”で乗り越えていこう!!という、前向きで不屈な精神の裏返しなのかな…と解釈できそうなのだけど。
と、考えつつ この曲が流れるアルバムのプロモ映像を観て。これ、街が沈んでてめちゃくちゃ不気味だな〜って最初観た時 衝撃だったけど、次のシーンでは静かに太陽の光が差してるんですよね。これは、こんな社会も捨てたもんじゃないよ?という意味か、LOVE はじめようよ.という意味なのか……何を示唆する演出なのか。……あ〜もう〜〜こういうのめっちゃ好きですわ。
まぁ結果的には、単純に カッコイイ曲だな!とか、プロモ凝ってて良いな!とか、そういうシンプルな感想に留まって終わるんですけどね。ただ、ミスチルはやっぱり奥が深いな〜!っていうことをこんなレビューを書きながら改めて強く実感してるので、今凄く楽しいです。
⑩UFO
この曲も最近じわじわキテる。とにかく世界観がスゴい。どういう内容なのか詳しく解釈 考えるのはまだ出来ないんだけど、
恐らく、強く惹かれ合う2人の間には何らかの壁,試練があって結ばれなくて、苛立ちの日々の中で求める”自由の世界”をUFOの光に見立てて SF映画ばりに鮮やかでグッとくるラブストーリーが展開されるという…そういう感じの歌。
実はこの曲、当然もう削除されてるんだけど 半年くらい前にYouTubeに誰かがフルでアップしてて、”いや これダメでしょ…”と思いつつも サムネイル見たら あの映画「君の名は。」のメインビジュアルになってて、不思議と腑に落ちた記憶。確かにこの曲聴いてると、「君の名は。」のシーンに近い情景が浮かぶような気がする。
やっぱり桜井さんの感性って凄まじいな〜と思うし、そんな真骨頂ワークスなミスチルを体感できるこのアルバムは最高です。
なぜ二人、今になって惹きあってしまうんだろう。
⑪Drawing
シングル「youthful days」のカップリングから収録された曲。この曲もすっごく好きだな…。イントロからキラキラと響く音に引き込まれ、”もっとうまく絵が描けたら、君を描きたい。”という 少年のように清らかで優しく真っ直ぐな愛が伝わってきて 涙。
淡い光の曇り空に
フワフワな時を刻んでいく
この素晴らしい 煩わしい気持ちを
真空パックしておけないもんかなぁ
このフレーズがまた絶妙だな〜!
こちらこそ、この曲を聴いてる時の 切なくもどこか懐かしく愛おしいような何とも言い表し難い気持ち、真空パックしておけないもんかな。
⑫君が好き
名曲。というか曲も好きなんだけど これはもうPVがあまりにも名作すぎて、PVマニアの自分 感涙レベルの代物。残念なことに去年 配信ベストが出る影響で公式フルPVが全削除されて 現在は↑のshort ver.しか見れない状態だけど、これに関してはもう何年も前から何回も何回も見るほど好きだったし、名優・窪塚洋介の演技の破壊力はやはりただものではない。見てるだけで泣ける。。2001年〜2002年とかマジで日本のミュージックビデオ 黄金期。
監督は 先程のレビューでも触れた丹下紘希さんが担当しており、
”病気の治療のために隔離された部屋に閉じ込められた男女がガラス越しに惹かれ合い、謎の男(桜井和寿)が不思議な力でシステムを封じ込め2人を解放 → 病態が危険レベルに達しつつも2人は触れ合い 真の愛を知り、外に飛び出し、入口の階段で力尽きる…”
……という、まるで2時間越えの映画を観ているような あまりにも濃密な数分間のストーリーに鳥肌必至。こんな世界観を創造し得る丹下監督、どんだけ天才なんですかっていう。Mr.Childrenと映像芸術が生み出す美しさの相乗効果は、もはや人智を超えている。
と、まぁこの曲を語ろうとすると ほとんどPVの話題のみになってしまうわけですが(笑)、本当 名曲ですよね。終盤にきて こんなに素敵な曲を聴かせてくれるイツワンはやはり何度聴いても飽きない。
⑬いつでも微笑みを
温かな鈴の音と口笛がリズミカルに響いて ホッと幸せな気持ちになる1曲で、2007年には損保ジャパンのCMソングに起用されたらしいですね。
出演されてるのはなんと あのガッキーこと新垣結衣さん。「恋空」に「コード・ブルー」に…ミスチルとガッキーの共演率って高いんだな〜,良い相性だなぁと気づいた。
曲は桜井さん曰く「橋幸夫さんと吉永小百合さんの『いつでも夢を』をイメージして作った」らしいけれど、そこをフィーチャーするだけでなく、
もし僕がこの世から巣立って逝っても
君の中で僕は生き続けるだろう
そう思えば何とか やっていけそうだよ
こんな風に 深く考えさせられるフレーズもあったりして、もう本当に流石だな〜と。
”だからいつでも微笑(えみ)を”。良い歌詞だな。グッとくる。
⑭優しい歌
そして、「いつでも微笑みを」からの流れでこの曲に入るのがこれまた絶妙なんですよね〜!! ミスチルにとって20枚目のシングルとなった、2001年の夏の歌。
最近この曲もめちゃくちゃ好き。鼻歌で何度も歌ってしまうような、心地のよいメロディ。演奏時間は全てのシングルの中でも最も短い曲らしいのだけど、どの曲にも負けないくらいの圧倒的な満足感と多幸感に満たされるから、良いなぁこの曲は。まずタイトルが良いですよね。本当に”優しい歌”。
…そんな素晴らしい気分の中、アルバムはフィナーレへ。
⑮It's a wonderful world
ラストは表題曲。3曲目「Dear wonderful world」の続きがここに描かれていて、「overture」〜「蘇生」のサウンドがそのままこっちに繋がっている感じもまたGood。
忘れないで 君のことを僕は必要としていて
同じようにそれ以上に想ってる人もいる
あなどらないで 僕らにはまだやれることがある
手遅れじゃない まだ間に合うさ
この世界は今日も美しい そうだ美しい
この長いアルバムの中で、最後に辿り着いた結論,メッセージがこのフレーズたち。迷ったり、暗くなったりすることはあっても、結果的に 自分が生きる世界を肯定することができたようですね。
いや〜本当。なんて深いアルバムなんでしょう。聴けてよかったな,と、心から思いますよね。
ということで。少し長くなりましたが、15曲の感想を書いてまいりました。
本当に素晴らしい名盤だと思います。ミスチルの新たな魅力もザクザク発掘しまくり。最高ですね。
では。惜しみない敬意と愛を込めて、イツワンを。(↑「ファスナー」っぽくw) 最後まで読んで頂き、ありがとうございました。