静穏の日々

好きな音楽、テレビなどの趣味を気ままに。

アルバムレビュー・竹原ピストル「PEACE OUT」〜求めていた音楽がここにあった

2ヶ月ぶりの更新。本作を聴いていて、言いたいことが次々に出てきたので、ザーッと書いていこうと思います…!

今回スポットを当てたい作品は、竹原ピストルさんのニューアルバム「PEACE OUT」。今年4月5日にリリースされたばかりの注目作です。

この方の曲をちゃんと聴こうと思ったきっかけは、1月クール 毎週楽しく見ていたテレ東の深夜ドラマ「バイプレイヤーズ 〜もしも6人の名脇役がシェアハウスで暮らしたら〜」で主題歌となっていた「Forever Young」を聴いていて、好きなドラマ主題歌の音源は基本ちゃんとCDを入手して聴きたいと思ってたのでレンタルで借りて聴いた、という極単純なもので、それはそれは些細なきっかけでした。が、実際にこの作品を聴いてみたら、想像を遥かに上回る興奮と感動が待っており(…って端的に言い表してしまうのも惜しいくらい)、泣けてきて仕方がなくて、もう色々な感想が混ざりあって頭が竹原さんのことでいっぱいになって、初聴きたった1日目で ”一生愛し続けたい!!”と感じるほどの歌声と音楽と、竹原さんの素晴らしい人間性がそこにはあったのでした。


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①ドサ回り数え歌

ドサ回り」、とは芸能人などが地方を巡業することを意味するらしいですが、この曲では竹原さんが全国各地を回ってライブをする時の想いを綴った1曲であり、実際ライブではお馴染みの曲だそう。今作ではそんな中で既に披露されてきた曲が未音源となっていて お客さんから音源化を希望されていたものが多いらしく、この曲もその中の1つであるらしいです。というのは今回ちゃんと調べるまで知らなかったのですが、なんだか初めてこの方の音楽に触れる自分でも、温かな愛が間近に伝わってきて、とても幸せな気持ちになるんですよね。

 弦、切れて 縁、切れて でも元気でね

嗚呼、ドサ回り 数え歌

一見さんから常連さんまで元気でね

嗚呼、ドサ回り 数え歌

このアルバムのタイトル「PEACE OUT」は米俗語で「じゃあな」「また後で会おう」という意味だそうですが、そんなテーマに沿った 始まりに相応しい1曲となっていると思います。

 

②虹は待つな 橋をかけろ

明るくて男らしくて、聴いてるだけで元気が出てくる1曲。この時点でもう、すぐにこのアルバムの世界観 (かつ”ピストルワールド”)にグッと引き込まれましたね。"一見さん"の立場で聴いても"常連さん"の立場で聴いても、きっとこの 温かみに溢れたメロディ、歌声には聴き入ってしまうというか、すっごく良い入り口になっているように思います。

なんだろう……愛おしくて、とにかくカッコいい!! 

夕日の輝きを見つめながらこの曲を聴けば、必ず、明日への強い活力となることでしょう。

虹は待つな 橋をかけろ

例え汚すことになろうとも

その涙に橋をかけろ

虹は待つな 橋をかけろ

 

③一枝拝借 どこに生けるあてもなく

前曲に引き続き ギターの音と歌声が沁みる1曲。ここまで来て、もう完全に竹原さんのこの歌声に惚れてましたね。そして、歌詞にも注目して聴いてみるのですが、

これっぽっちもお呼びでない春雨が

これっぽっちもお呼びでないのは人ばかり

当の桜は滲んだ昼下がりの片隅

紅い唇の端をニヤリとめくりあげている

一枝拝借 どこに生けるあてもなく

”春”と”桜”をテーマに、どこかやるせない気持ちを表現している楽曲、という風に受け取ることが出来ますが、なんだか凄い…!! ビックリしました。洒落てて、かつ愛を感じるような、たくさんの魅力に溢れている…! 一体、どういうものからインスピレーションを受けて、こういう詩をお書きになるのでしょう。竹原さん。日本のボブディランなんじゃないでしょうか。

 

④ママさんそう言った ~Hokkaido days~

この曲では、竹原さんがかつて北海道でお世話になったスナックのママさんとのやりとりを回想し 感謝の気持ち等が表現されておりますが、なんとこの曲、ラップをメインにストーリーが進みます。

「ママさん、どこのどいつでも構わねーから、今日もどこのどいつかの前に10分だけくれよ。」
俺の特攻はもはや野放しの状態。
小うるせぇママさんも眉間に皺を寄せて了解。

「勝手にやんな」って
ママさんそう言った

「ただし必ずやっつけろ」って
ママさんそう言った

「おまえさんならやれるだろ」って
ママさんそう言った

「さぁ、ノックアウトしといで」って
ママさんそう言った

前知識ナシで聴いていたので知らなかったのですが、竹原さん、ラップ(または”語り”)という表現方法も含めて音楽を発信してこられてる方なんですね。前の3曲からはこれが想像出来ず、ここでさらに強い衝撃を受けることとなりました。

過去にボクシングをやられていた竹原さんだからこそ書ける、スポ根漫画さながらの迫力あるリリックと、竹原さん自身が体験した人生の記録…聴いていてどんどん引き込まれます。フォークやロックに精通している方だと思えばヒップホップの要素もある、この多彩さ。これは、こういった アルバムを(またはライブ等を通じた音楽体験にて)ちゃんと聴こう、知ろう、と思ったリスナーにしか伝わらない一面ですよね。やっぱり少しでも興味のある歌手は アルバムって聴いてみるもんだな、と思いました!

(↑昨年投稿された竹原さんのブログ記事。実際にお世話になった店のことと この歌の歌詞が綴られています。聴きながらこれを読むと なお、曲の世界観が濃く伝わってきて良いですね。)

 

⑤ぐるぐる

ぐるぐる

ぐるぐる

この曲は、かつて竹原さんが所属していたフォークバンド・野狐禅(ヤコゼン)の活動時に作られた曲らしいのですが。

ほんとに…!! この歌声が…!!

好きすぎる…!!!!!

なんかもう、5曲目にして 愛が抑えきれないレベルに達しました(笑)。

涙があふれて 涙がこぼれ落ちそうになって ガムテープで顔面をぐるぐるにする

涙は感情の墓場だぜ 

ガムテープで顔面をぐるぐるにする

グッときますな〜〜。ハーモニカ吹き始めるところとか、めちゃくちゃカッコいい。この歌声をずっと聴いていたい!! って、そう思わせてくれる1曲。個人的に、これまでフォーク系統の音楽とか全然聴いてこなくて知識もほぼ皆無なだけに、より衝撃度が強いんですよね。本当に、生まれて始めてハマったフォーク音楽だと思います。故の親近感。

何か、こんなにやるせなさと悲哀に塗れているのに、どこかに希望を感じてしまうような、この力強い歌声は、人生経験が豊富な竹原さんならではなのでしょうか?  竹原さんは一体今まで、どんな人生を歩んできたのでしょう? 。…聴けば聴くほど興味が沸いて沸いて仕方がないので、どんどん次の曲が聴きたくなります。

 

⑥一等賞

一等賞

一等賞

こちらは、前の曲とはうってかわって、穏やかな雰囲気に包まれた温かみのある楽曲。

僕は目を覚まし 朝焼けはまだ寝ぼけてる

誰より先に踏み出して影より長く呼吸をする

道を逸れるなんてそんなの誰にだってできるじゃないか

僕はこの道の中にこそ道を見いだしてみたいんだ

まるで、暗かった心の中に、少しずつ光が差していくような感覚。

う〜ん痺れる…! 本当に、元気が出てきますな〜。これ、前の曲と同じ人が作ってるんですよ!? 。曲ごとのギャップがハンパじゃない!! 竹原さん、一体どこまで多彩なんですか。良い意味で 打ちのめされっぱなしですよ。曲が進むごとに 聴いてて様々な思いが増え続ける一方。

このアルバム、まさに疾風怒涛。

 

⑦ ため息さかさにくわえて風来坊

低いギターの音と打楽器のドン!ドン!という音から始まり、開始数秒で曲の世界に引き込まれ、デジタル感も含んだ音が気持ちを加速させます。こうしてアルバムとしての「竹原ピストル」を聴いてると、テレビとか見る”弾き語りスタイル”とは異なった多種多様な魅力が溢れているのが、改めてよく分かりますよね。どんな曲も歌いこなすカッコよさ!素晴らしい。まさに「風来坊が駆けていく」という情景が目に浮かぶような、ワクワクされられる絶妙なサウンド旅の途中で気分たっぷりに聴いてみたい。

どこへ行く?どこへ行く?どこへ行くったらどこへ行く?

風来坊 風来坊 風来坊ったら風来坊

ため息さかさにくわえて風来坊

 

⑧最期の一手 ~聖の青春~

'16年 映画化もされ話題となった作品「聖の青春」ですが、竹原さんはその 実在の 天才将棋棋士 故・村山聖 九段にインスピレーションを受けてこの楽曲を制作したのだと思います。

生きて 生きて たどりついた 最期の一手
一手 一手 たどりついた 最期の一手

この曲ではストリングスの演奏も特に印象深く、奥が深い曲の世界観に、少しずつ落ちていきます。「生きて 生きて」。「一手 一手」。その簡潔で力強い歌詞が、とにかくグッとくるんですよね。

 

⑨ただ己が影を真似て

ピアノと歌だけで構成されたシンプルな楽曲ですが、これによって ここで、竹原さんの作る歌詞、歌声の素晴らしさだけでなく、メロディーも本当に魅力に溢れているんだ、ということを更にはっきりと感じさせられます。

こんな風にしか歩いていけないことを恥じてたいつかがあった
こんな風になら歩いていけると安堵しはじめたいつかがあった
目指さなければ迷わねえさ
ただ己が影を真似てつまづくだけさ

泣けてくる…。

毎晩寝る前に、1人静かに聴きたいですね。もう、歌声にもメロディにも究極 引き込まれ、もはや この歌詞を書いていた時の竹原さんの心情が、手に取るように伝わってくるよう。こういう曲を聴いて、深く深く音楽の世界に潜っていきたい。泣きたい時は思いっきり泣きたい。

 なんだかアルバムを聴いてる時って、いま聴いてる歌手が自分だけのためにライブを開いて歌ってくれてる感じがしてくるんですよね。この曲ではそのようなものが特に強く感じられてグッとくるんです。竹原さんと自分だけが存在する世界での3分間、みたいな。そういう瞬間に巡り会えるから、やっぱり音楽を聴くのって、本当に楽しいです。

 

⑩例えばヒロ、お前がそうだったように

アルバムの中でズバ抜けて好きな1曲がある時、その曲を大々的にフィーチャーして それだけで一つの記事にしたいくらいな時があるのですけれど、これがまさにそんな曲。

語り手が(恐らく実話なので竹原さん自身が)、自殺した もう永遠に言葉を交わすことが出来ない 「ヒロ」という1人の友人に向かって、溢れだす想いをぶつけていく歌であり、歌、というよりは、これこそモロに「語り」というか、でも、やはり上手く言い表すことが出来ない、この音楽。竹原さんはそんなリスナーの気持ちに応えて、

これは歌なんかじゃない。
ぐずぐずぐずついたかさぶただよ。

と言う。声が駆け、音が駆け、一字一句逃さず言葉が入ってきて沁みてきて揺さぶられ打ちのめされ、曲が終わって音楽プレーヤーのカウンターを見るたびに、「この曲7分半もあったの!? いまそんな経った!?」と驚く。時の流れも忘れるほどに、一秒残らず曲の世界に引き込まれる…視聴の感覚としては、そういうものなんですよね。

竹原さんは、”睡眠薬たらふく食らって 勝手にくたばりやがった”「ヒロ」に向かって叫ぶ。そして、現代社会、疲れる毎日、不安に塗れた毎日、あやふやな日常の中を生きる僕らに向かって、魂ごと掴んでグラグラと揺さぶって、竹原さんはこう言う。

生きたいとか、死にたいとか。

そんなことはときに、あくまでときに、どっちでもいいような気がするんだ。

そんなことより、生きたいなら生きたいなりに、死にたいなら死にたいなりに、

ちゃんと人間か?

ちゃんと人間か?

目が眩むほど、真っ赤に真っ赤に

ちゃんと人間か?

聴いてて、涙が出てきました。誰かに、ずっと、そう問いかけてほしかった気がして。なんだか、言い表しようのない世界の道理や概念が、この曲には全て収まっている、そう感じました。僕が日々の中で求めていた音楽は、ここにあったのだな、と。

そして この曲を聴き終えて 改めて色々な思いを頭の中で巡らせていると、もう心臓がバクバクしていて、なんか、凄いものを聴いてしまった…!!という興奮に満たされるのです。2017年、確実に 僕の中で最も衝撃を受けた楽曲だと思います。

 

⑪Forever Young

このアルバムを山と例えて「例えばヒロ、お前がそうだったように」を頂上地点とするならば、ここから後は下りの段階でしょう。そんな中で、今回のリード曲となるこの曲をこの部分に持ってくるんだ!?という、なんという絶妙なポゼッション。初聴きのリスナーにも特に認知度が高いであろう重要なこの曲まで、1ミリも飽きさせない多彩な魅力を以てここまで持っていくとは、なんというテクニシャン。

前述した通りこの曲はドラマ「バイプレイヤーズ 〜もしも6人の名脇役がシェアハウスで暮らしたら〜」の主題歌で、ドラマとリンクしたPVでは 出演者の俳優さんの方々を前にして静かに語りかけるように歌っているシーンが見られ それがめちゃくちゃ印象的だったので個人的にはそのイメージが強くなっていますが、曲から伝わってくる熱さとして本当に、老若男女 どんな人にも響くような力強さがあり、この曲も泣けてきますよね。。名曲です…!

(↑PV撮影後のツイート。ここ数ヶ月の歌番組での佇まいとかを見てて思いましたが、竹原さんって本当に腰が低いんですよね。そういうところが好きなんです。)

くだびれた言葉で 新しい約束を交わし

萎れた声で 新しい歌をうたおう

満ち満ちた若葉はいつだって

色褪せた枯葉の上にひらくのさ

 

⑫俺たちはまた旅に出た

今回一番新しく制作した曲らしく、新たな世界へと船を漕ぎ出すような、そんな志が感じられる1曲。伊藤忠商事のCMソングに起用されています。(←この曲がテレビから流れるたびにめちゃくちゃ気分が高揚するようになりました。笑)

俺たちはまた旅に出た

良い兆しなんてこれっぽっちもなかったからここまで来れたんだし

俺たちはまた旅に出た

良い兆しなんてこれっぽっちもないから これからも行くんだよ

竹原さん自身 今年からライブをするお店との完全なブッキングをやめて1人新たな道へ歩み出す、という決意の籠った歌でもあるらしいですが、これを聴いているリスナーにも「これからも頑張ろうぜ!」というメッセージが込められてると思うし、聴いてて本当に元気が出てきます。

 

⑬マスター、ポーグスかけてくれ

「ポーグス」とは、80年代に活躍したイギリスのロックバンド・The Poguesのことを指すそうで。4曲目の「ママさんそう言った ~Hokkaido days~」同様、かつてお世話になった店のマスターとのやりとりを回想し感謝の気持ちを表現している楽曲だと思われますが、この曲は今までのどの曲よりも幸福な雰囲気に溢れ、正真正銘 アルバムの〆(シメ)に相応しいものとなっている気がします。

てことでそんな曲に登場するポーグスの代表曲と言われるものがこちら。♪アイリッシュ・ローバー

なんとも陽気な雰囲気。「マスター、ポーグスをかけてくれ」自体 この曲に影響されて制作されたのかもしれませんね。

いやはや、曲のルーツを探りながら聴く音楽って、楽しいですなぁ。

 

初めて竹原ピストルを聴く方には「まずこれを聴いてください、これが僕の歌です」と言えるアルバムなので、たくさんの人に聴いてほしいです。さらにここから過去のアルバムをさかのぼったら自分がどれだけブレブレの人間かがわかると思うので、そういうところもちゃんと見抜いてほしいです(笑)。

 

(インタビュー「竹原ピストル 不惑にして“惑えず”歌うたいの覚悟」 音楽ナタリー 2017年4月5日 より)

 

人は、毎日悩みや不安や色々とあるものの、日々どこかで、色んな人の作る音楽にお世話になって、それが心の支えとなって、今いる暗い世界から明るい世界に連れ出されて、笑顔になって、生きていく。そういう毎日を体験し、繰り返す人間というものを竹原さんは分かってて、きっと竹原さん自身もそれは同じで色々なものを抱えて生きてて、それゆえ音楽を愛して、力強く歌い、自らの音楽を発信するのかもしれないし…と、聴きながらそんなことを考えていると、このアルバム「PEACE OUT」及び 竹原さんが作る音楽って凄いパワーを秘めてるんだなぁと、改めて思います。とにかくこのアルバムは本当に色々なものが詰まってて、”人生”を感じる1作ですね。是非ご一聴ください…!